もし八尺様を目撃したり、八尺様と遭遇してしまった場合は、自分で解決しようとせず、かならず怪異対策課へご連絡ください。命を守る行動を。【緊急ダイヤル】988【相談ダイヤル】#9888
概要
八尺様とは、6月~10月にかけて精通済みの男性(多くの場合男児)が異常なほどの高身長の女性と遭遇したあとで消息を絶つ一連の現象、またはこのとき遭遇する女性型の妖怪のことを指す。八尺様の被害に遭うことを特に「八尺様に魅入られる」と呼ぶ。日怪研による現在の分類は「未確定妖怪C-I」。WSOには登録されていない。
現象
被害報告に共通する内容をもとに、この怪異には「目撃」「遭遇」「失踪」の3つの段階があると考えられている。
目撃

(日怪研所蔵の伝聞想像図。一切の所有・利用を禁ず)
全国各地の、主に田園地帯で昼夜問わず目撃される。身長はその名の通り240cmほどで、白装束を身にまとっている。身長は高いが頭部はおおよそ人間同等のサイズで、四肢が長い。また、標的の射精を促す、非常に大きな乳房をもっているとされる。近年では大きな麦わら帽子をかぶっているという同一の外見的特徴をもつ遭遇報告が複数確認されている。
この際、「ぽ」「ぼ」「も」をあわせたような、形容しがたい低い音を発する。
その場にいるほぼすべての人はその存在に気づかないが、これに気づいてしまうことで標的となる。気づいた場合も強く認識することはできず、その時点では異常な身長に特段違和感を覚えない場合が多い。これは、八尺様が持つ暗示能力によるものと考えられている。
遭遇
目撃した日の晩に八尺様が訪れる。このときは標的の知人の声を模倣して会話することが可能で、標的をけしかけたり、執拗な脅迫をして性行為に至る。これを遭遇という。
強制性交・手淫・口淫・自慰強要・前立腺刺激・臨死絶頂・睾丸圧迫・異物挿入等の被害が報告されている。
なお、被害者による自傷行為以外に外傷が報告されたことはなく、物的損傷被害の報告もない。
失踪
八尺様と遭遇した者は、その当日~数週間以内に失踪する。多くの場合1日から3日で、最長では20日という記録がある。目撃証言を残した当日に失踪する例もある。これまで失踪後に発見されたことはなく、遺体も見つからない。
失踪現場には被害者の精液等の体液が残されることがあるが、それ以外の痕跡は残らない。
現場に残された被害者の体液も八尺様による被害であることの判断基準にはなるが、証拠になることはない。八尺様に魅入られたと認定されるのは、失踪前に被害者本人が遭遇を報告し、失踪後5年以上発見されなかったケースのみである。
目撃報告のない原因不明の失踪でも現場に体液が残されている場合があるが、これらが八尺様による被害であるかどうかは証明不能で、すべて原因不明の神隠しとして記録されることになる。
被害者を片時も一人にしないことで遭遇後の失踪を先延ばしにすることが可能である。ただし、一瞬でも孤立させてしまえば失踪する可能性がある。
失踪を防ぐために組織的に完全な監視下においたケースが一例あるが、被害者は遭遇後4日で錯乱状態に陥り、陰茎や睾丸に対する自傷行為に及んだ。睾丸を摘出することで自傷行為を抑えたが、その後てんかん発作や言語障害が発生し、転院先の精神病院で失踪した。
また、初回の遭遇の後、被害者が家族とともに国外に逃亡したものの、現地で失踪したケースがある。
対策
もし八尺様を目撃したり、八尺様と遭遇してしまった場合は、自分で解決しようとせず、かならず怪異対策課へご連絡ください。命を守る行動を。【緊急ダイヤル】988【相談ダイヤル】#9888
ここに挙げるものはすべて被害報告や伝承に基づくものである。真偽不明であり、信憑性は加味されていないことに注意されたい。また、初回遭遇前にのみ有効で、遭遇後の対策方法は見つかっていない。
無関心の徹底
八尺様は自分に対して無関心である者に対しては興味を抱かない。また、一度標的にされた場合でも、一貫した無関心を示すことができれば、標的から外される。報告された撃退方法には以下のようなものがある。
- 目を合わせない
- 応答しない
- 自ら手を触れない
- 考えない(目撃した姿を思い返さない)
密室
遭遇前の八尺様は密室には侵入できない。空気が通るような隙間なら問題ないが、短辺一寸(3cm)以上隙間があってはならないとされている。
呪術
一般の悪霊・怪異同様に呪術によって遭遇を回避したという報告がある。魔除け札等の護符に効果が期待できる。
起源・分類
日本全国に類似する伝承・言い伝えがあり、地域を限定しない。時期によって報告される容姿の違いは大きいが、地域による違いは比較的小さい。
伝承として語り継がれる形で地域に定着しているものの、資料となる書物等がほとんど確認されていないため、発生開始時期は不明である。
最古の記録としては、元禄15年に一丈(3m)の白装束の女を目撃したとする記録がある。ただし情報量が少なくこれが八尺様であったかは不明。
また、怪異ポルノ含め未だに写霊機での撮影記録はなく「未確定妖怪」に分類されている。
八尺様の起源や分類については怪異考古学者だけでなく、神学者や生物学者を巻き込み、現在まで議論が行われている。
通説
異邦人由来説
古代・中世の日本に何らかの形で漂着した高身長の異邦人を妖怪と見間違い、噂が変化しながら広がり怪異として定着したとする説。
当時は高身長の女性は非常に珍しく、誇張が繰り返された結果、八尺という長さに収束されたと推測される。
外国人が漂着した記録は全国各地に残っており、八尺様の伝承が各地に点在していることとも矛盾しない。
ただし、怪異は人々の関心が薄れれば自然消滅するものである。各地に伝承がある一方で記録がほとんど残っていないこの怪異の認知度は低かったと考えられるため、中世以前から存在が続いていることには疑問が残る。この疑問への反論として、大柄な異邦人による性的被害のトラウマが強い思念となって怪異を残存させていると説明されることがある。これは八尺様の搾精行動とも矛盾しない。
俗話由来説
近代以降に何らかの意図を持って流布された都市伝説によって発生した怪異であるとする説。噂話を起源とする怪異は多く支持されている説ではあるが、ブーム化する俗話ほどなんらかの記録に残り安いものであることから、この説は記録が載っていないという矛盾を解決できていない。
新説
超自然個体説
近年、八尺様を怪異以外の超自然存在であり、かつ実体を持つ個体であるとする説が提唱されるようになった。
過去最も有力視されたものに、「サキュバス変異体説」がある。これは、八尺様がサキュバスの突然変異体、あるいはユニークな変異種であるという説である。
サキュバス変異体説の根拠には次のようなものがある。
- 標的の射精を促すという点で、サキュバスに合致する
- 若い男を好むサキュバスが多い
- 非飢餓時のサキュバスに似た性的な体型を持つ
- 完全な人型である
- 主に夜に遭遇する
- 目撃・被害報告における外見的特徴に一貫性があり、怪異特有の認知ゆらぎがない
- 日本の怪異でありながら西洋的な格好をしているという報告が多い
これに対する否定・反論は以下の通り。
- 精液を体内に取り込まない例も報告されており、この点はサキュバスおよびその変異体・変異種の傾向とは明確に異なる
- 被害者に栄養失調や脱水症状はみられない
- 被害者の遺体が発見されたことはない
- サキュバス類に見受けられる変身能力は報告されていない
- 日本国内でしか観測されていない(失踪現場が日本国外であったことはある)
- 多くの怪異と同様に無関心によって撃退が可能である。サキュバスは相手の意思に問わず獲物を決定・捕食する
一時は多くの評価を得た説ではあったが、反論のほうが説得力をもつため、現在では下火になっている。ただし、この説を機に、八尺様を怪異としない見方が加速することになった。
この他、神・霊・鬼・鬼化した人間とする説などがあるが、八尺様の存在証明の難しさもあり、仮説の域を出ない。
存在証明が難しい理由
八尺様を超自然個体と証明するにはいくつかの課題がある。
まず、未成年が遭遇する場合が多く、保護の観点から囮調査が認可されていないことが挙げられる。成人男性による囮調査も行われているがこれまでに成果は残せていない。
また、性被害や臨死などの恐怖を同時に体験したことでPTSDを発症し、被害者が聴取に正しく応答できない問題もある。加えて、被害者は回復をまたずに失踪してしまうため情報を得ることはできない。
また、映像や写像を残す行為が怪異ポルノ製造と判断される恐れもあるため、多くの大学や研究機関は積極的に調査を行っていない。
脅威レベル
八尺様に魅入られたことが疑われる失踪事件の報告は稀であり、確証があるものは過去5年で1件もなく、可能性があるといえるものでも毎年数件程度である。
夏の神隠しの件数自体は多いものの、八尺様の被害認定条件が厳しいことや、被害者が特定の属性に限られることもあり、結果として八尺様の危険度は「C-I(生死に関わる/小規模/低頻度/低認知度)」に設定されている。
失踪だけでなく、失踪前の被害者に精神ダメージを与え、被害者家族にも身内への性被害と失踪という二重のトラウマを与える点、他の隠し神や攫い鬼のほとんどが「C-III」もしくは「C-IV」である点などから、過小評価だと批判する声も多い。
もし八尺様が怪異でなく超自然個体だった場合には、明確な意思を持った計画的活動を行う恐れがあり、脅威レベルは大幅に見直されると考えられる。
二次被害状況
被害件数が少ないことを理由に、八尺様の発生記録は被害者保護の観点から長らく非公表であったが、「霊魔怪鬼に関する情報公開法」の施行により現在は確定済みの案件のみ、全件公表されている。
本来は被害の拡大を未然に防ぐために制定された情報公開法だが、八尺様に関しては地域や特性が公表されて以降、遭遇目的の違法派遣件数が急増し問題になっている。既に3件の違法派遣が検挙済みである他、現在までに10~22歳の8名の男性が原因不明の失踪を遂げており、八尺様による失踪や、囮要員にするための人為的な誘拐も含まれるとみて捜査が行われている。
社会的側面
八尺様は未確定妖怪という分類であり、WSOに登録されていない。それゆえ一般認知度が低いが、一部の愛好家からは既にカルト的人気を獲得している。
有力報告に共通する外見的特徴や特性から、八尺様が性的に魅力的である可能性が高いことが理由であると考えられる。
実際に、八尺様との遭遇に関する違法派遣のほぼ全てが怪異ポルノ製造目的である。