高山圭太の場合7

「圭太、おかあさんは少し寝るけど、がんばってね」

「それじゃあ、よろしくね」

ひどく疲れた様子のお母さんは、さっきリビングに入ってきたお父さんにそう言って、部屋を出ていった。

「おつかれさん」

おじいちゃんは静かに、お母さんをねぎらった。お父さんは何も言わなかった。

今日でちょうど二週間が経つ。家族による「24時間監視」がはじまってから。

あの日、お父さんに嘘をついて、僕はお姉さんとセックスをした。

腫れ上がった金玉が普通の大きさにもどっていることをお父さんたちに問い詰められた僕は、お姉さんとセックスしたことを正直に話した。

お父さんもおじいちゃんも怒ることはせず、静かに泣いていた。

――精液の味を覚えた八尺様は、どこまでも追ってくる。

僕がセックスの仕組みをしるきっかけになる話だったから、よく覚えている。それに、お姉さんとセックスした日にも、何度も何度も説明をされた気がする。僕はもうセックスのことしか考えていなくて、聞き流していたけど。

お姉さんは僕の精液をいままで一度も味見をしなかった。だから、お姉さんはあの部屋でしか僕に会えなかった。

だから僕は一応安全だったけど、僕は射精ができない呪いを掛けられてしまっていて、呪いを解くために伝承の通りにあの部屋でお姉さんを締め出して夜を明かす必要があった。

それなのに、結局、精液の味を覚えられてしまった。それも、自分から望んで……。

お姉さんは僕のことを連れ去らないのだから、いつでもお姉さんが会いに来てくれるなんて、僕にとっては最高の話だ。

でも、家族のみんなちがう。みんな、八尺様が僕を連れ去ると信じてる。そのせいで、お父さんとおじいちゃんは、僕が八尺様に連れ去られないようにするため「24時間監視する」と言い出した。

それだと僕はお姉さんに会えなくなってしまう。それは困るので、お姉さんは僕のことを連れ去らないと何度も訴えた。実際に、セックスしても連れ去られることはなかったし、お姉さんは約束を破らない。

でも、僕はセックスするためにお父さんに嘘をついた。だから僕の言うことはもう信じてもらえなかった。

そうして、家族のみんなが交代して僕を常に監視することになった。

トイレのときですら、一人になることはない。当然、シコシコすることもできない。地獄だった。

監視が始まって一週間たったころ、僕はもうあきらめて、お父さんとお母さんがいる前でシコシコしてしまった。

すぐにお父さんに止められたけど、シコシコを覚えてから初めてこんなに我慢したから本当に気持ちが良かった。気持ち悪い声で吠えながらシコシコする僕を見てお母さんは泣いていた。

その後、手首を体の後ろ側で縛り付けられてシコシコできなくなってしまったけど、それでも机の上や床にチンコをこすりつけて気持ちよくなろうとした。

見かねたお父さんは、ついには僕をベッドに縛り付けた。

僕はその状態でも腰を振り続けた。パンツとこすれるだけでも気持ちがいい。みんなはもう止めなくなった。

静かな部屋で僕の情けない声とベッドのギシギシが響く。それが最近の日常だ。

本当は、その気になれば無理にでも部屋を飛び出して、お姉さんに会いに行くことができたかもしれない。でも、僕はそれをしなかった。だって、いっぱい精液をためてからお姉さんの中に出してあげたいから。

僕の精液に夢中になっているお姉さんは、とても変な感じだ。意識が途切れかけていてよく覚えていないけど、とても変な鳴き声で鳴いていた。 それに、チンコをくわえて飲みたがるなんて、しかもお尻に指を入れるなんて、普通じゃない。でも信じられないくらい気持ちよかったし、あのときのお姉さんを思い出すと、チンコがとても硬くなる。

お姉さんが僕の精液でおかしくなること、お姉さんに必要とされていることが嬉しくて、僕は射精できない苦しくて辛い気持ちを必死に我慢した。

日に日に金玉がどんどん大きく重くなっている。お姉さんの中で射精することを想像すると、ギューっと縮んで、お腹の下あたりがえぐられるように痛くなる。これがとっても気持ちいい。

このまま大きくなっていったらどうなっちゃうんだろう。大きくなった金玉をお姉さんは褒めてくれるかな。そんな恐怖とワクワクがまざって、金玉が強烈に跳ね回った。

「ゔゔゔ」

今までない痛みが全身に走って、いよいよ限界であることが直感的に分かる。

イケないのはわかってるはずなのに、全身の筋肉が工夫して、どうにかイケないかと、力んだり緩んだりして、体がのたうち回る。ああ、気持ちいい。

「本気で言ってるのか、親父」

ベッドがきしむ音以外に音がない部屋に、突然お父さんの声が響いた。

お父さんたちは、僕に聞かれたくない話は同じ部屋にいてもLINEをつかって文字で会話している。さっきからスマホをいじっていたから、二人で話していたはずだ。

「切り落とすしか、ないだろう……」
お父さんにつられて、おじいちゃんも口をひらいた。

「できるわけないだろ」

「じゃあ、このまま圭太を気狂いにするつもりか? それとも八尺様にくれてやるつもりか!?それに、村の子らが連れ去られてるんだ。輪島さんちの孫もな! もう三人目だ! 知らん顔ではいられんぞ」

え……?

「圭太は被害者の一人だろ!」

「先週から急にはじまったんだぞ! 圭太を隠した祟りにきまっとる!」

ふたりとも感情的になって、僕が知らないことを大声で話している。

「去勢したってダメだったって書いてあっただろ! 圭太なら平気だ、もう二週間も耐えてるんだ」

「そんないい加減な連中の言う事当てにすんのか! ならそいつらに泣きついてみろ! 実験台にされるのがオチだ!」

おじいちゃんが見たことない恐い顔で怒鳴っている。何の話をしているかよくわからない。

でも、おじいちゃんのいった切り落とすっていうのは、たぶん、金玉のことだ。前にもそんな話をしていた。

金玉が切り落とされたら……お姉さんに見捨てられる……! そんなの絶対にだめだ!
今すぐお姉さんに会いにいかないと……!

お姉さんがどこにいるかもわからない。計画はない。でも、この部屋を出る作戦だけはある。

「お、お父さん」

お姉さんに会えるかもしれないと思った途端金玉がまた疼きだす。思わず声がでそうになるのを必死に押し殺したまま、お父さんを呼ぶ。

「っ……圭太っ、ごめんな、なんだ?」

お父さんは我に返って、気まずそうに聞いてくる。

「トイレ……我慢してて……」

僕はまた嘘をつく。

「大丈夫か? さっきすごい苦しそうにしてたが…」

「今は落ち着いてて、行けるかなって……」

「そ、そうか」

お父さんは僕がまたシコシコするんじゃないかと心配しているようで、慎重に縛り付けている紐を外していく。

実際、お姉さんに会えると思って、チンコはひどく勃起して、あからさまにピクピクと首を振っている。

「おじいちゃんのいってたこと、気にしなくていいからな。さ、手を後ろに回して」

僕がシコシコしておかしくなってしまわないよう、トイレに行くときはお父さんが僕の後ろで膝をついて紐を結ぶ。角度はいつも同じ。

結び切る前に、僕は前かがみになりながら思いきり右足を後ろに振り上げて、お父さんの股間を蹴り上げる。

「ぐぅっ…!」

倒れ込むお父さんから逃げるように走り出す。

「圭太ぁ!!」

おじいちゃんが僕を呼ぶ声を無視して、僕は部屋を飛び出した。