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サキュバスの膨張限界

繁華街の一角の雑居ビル地下2階。看板もないその店は、一見すると隠れ家的な違法風俗店だ。しかしその正体は、怪異ポルノ製造・怪異風俗営業・違法怪異捕獲飼育・拉致誘拐等、怪異に関するあらゆる違法行為を稼業とする犯罪組織の営業所であった。

重い扉を開けて入店する、どう見ても普通のサラリーマンにしか見えないこの中肉中背中年男は客ではない。男の入店に気づくなり受付は背筋を伸ばしお辞儀するが、男は一瞥もせず奥へと進むのだった。

男がガスマスクを装着して入室した部屋には、大小さまざまなサキュバスが拘束・幽閉されていた。男を見るなり欲情して体を揺らすものもいれば、余裕そうに男を誘う仕草をするものもいる。

「本部長、お待ちしておりました」

男を本部長と呼ぶ、同じくガスマスクをした低身長の禿頭の男は、この施設でサキュバスの管理や研究を行う、組織の研究員である。

「少し痩せた個体が多すぎるように思うが」

本部長の男は一通りサキュバスを確認してからそう言った。

「一連の研究の成果もあり、最近は新規個体での飽食膨張の再現率も向上していまして、それに伴い餌が常に不足気味で……」

「ああ、そのようだな。だからといってこの間のような独断での拉致は二度とするな。ましてやここに直接連れ込むなんて、全く危険な真似を」

「しかしそれによってリザ、ああ、こちらの、個体番号L11の餓死を防ぐことができ、強制給餌による飽食膨張も初めて成功しまして……」

「いいから二度とするな。本部には供給増を催促しておく。何か報告はあるか」

「はい、リザが前回の飽食膨張でも過去最高体重を更新しました。餌側の枯渇死により膨張が停止しましたので限界は未知です」

「餌は2体投入したか?」

「いえ、従来どおり1体です。これまでは複数投入した実験では飽食膨張を確認できておりません。おそらくはサキュバスが本来は個を標的にしていることに起因するものかと思われますが……」

「あれほど不可能と言っていた強制給餌での膨張には成功したのだ。実験を続けろ」

「はい、そちらも続けます。それでですね、強制給餌の際に投入していた餌についてですが、興味深い結果が出てます」

「餌? ああ、件の拉致した一般人だったか」

「はい。強制給餌の際のリザの特出した膨張量に関わらず、餌個体が生存したにことについてはお耳に入っているとおもいますが、その後ミラの経口摂取にも耐えまして、回復速度も早く、すでに3度目の投入の準備が済んでおります」

「ん? 確かオーク因子を投与したと聞いているが」

「そうなんです。初回の衰弱が著しかったため応急処置的に投与しておりました」

「まだハジけてないとはな」

「はい。過去のケースと比較するとかなり緩やかなスピードで結合が進行しています。 ただ因子は着実に定着しており、崩壊爆散は避けられないと思いますが」

「ならば事故る前に廃棄しろ」

「それがですね、過去のケースではすでに崩壊しているはずの結合度を超えてきていて、前例がないほど精エネルギーの保有量が増加しています。これをリザの餌として投入できれば……」

「リスクを取れと?」

「因子注入直後から末端器官の発達が見られますが、 それ以外にはまだ崩壊の徴候がありません。この一回を耐え抜く確率は8割、いや9割を超えるかと…」

「L11はすでに十分すぎるほどの膨張量だ。これ以上価値を高めても買い手が見つからないほど高額になるだけだぞ。それに買い手がついたとて、オーク因子なしでは卸し先で膨張を再現することもできまい」

「これ以上の膨張量となれば、怪異ポルノとして流通させるだけでも十分な資金源になります。また、過剰かつ強力な吸収を癖づけられていますから、通常の膨張個体と偽って価格を抑えて一般向けに販売し、オーナーを枯渇死させて再回収する運用も安定するかと……」

「研究員が運用に口をだすか」

「これは、失礼いたしました」

「……くれぐれも商品に傷を付けんようにな」

「はい! ご承諾いただきありがとうございます」

満足そうに部屋を去る本部長を見送る研究員の股間は、熱く固くなっている。

「はっ、はっ、リザ、もっと、もっとキレイにしてあげるからね……」

研究員は目の前の痩せ細ったリザと、映像上の膨張しきったリザを見比べながら自慰に拭けるのだった。

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