僕は嘘つきだ――――。
「け、圭太……」
精液まみれになった部屋でお父さんに起こされる。普段ならカピカピにあるはずの精液は、量が多すぎるからか、乾ききっていない。何日も出していなかったからなのかはわからないけど、黄色くてネバネバしていて、部屋中に生臭い匂いをただよわせている。僕はもう、消えてなくなりたいような気持ちだった。
八尺様は――お姉さんは僕のことを連れ去らなかった。
襖を開ける前、お姉さんは「連れ去らない」と僕に約束した。約束を守った。信じていなかったわけじゃないし、連れ去られたかったわけじゃない。
でも、僕はお父さんたちを裏切った。この後のことを考えると、いっそのこと連れ去られていたらとすら思う。
もう言い訳もできない。お父さんはこんな僕をどう思うだろう。
「無事で良かった……!」
その絞り出すような小さな声とは対照的に、お父さんは汚れきった僕を強く抱きしめた。
「ああ、ありがたやありがたや」
おじいちゃんは、部屋に貼られた御札に祈るように手を合わせていた。僕が連れ去られなかったのを御札のおかげだと信じているのだと思う。
てっきり叱られると思っていたけど、お父さんは優しかった。シャワーで僕の身体を洗ってくれたけど、普段どおりの話しかしなかった。
その後は近くの山に遊びに連れて行ってくれた。おじいちゃんの周りには自然がたくさんあって、遊ぶところがたくさんある。田舎で育ったお父さんは、自然を使った遊びを色々知っていてかっこいい。
とにかくたくさん遊んでもらった。お姉さんのことはあえて話さないようにしているようだった。
そして晩御飯のとき、お父さんは意を決したように切り出した。
「なんて脅されたんだ」
「……」
「怖かっただろうが、脅しに屈しないことでしか、あのバケモノには勝てないんだ」
どうやらお父さんは、僕が脅されて襖を空けてしまったと思っているようだった。
「口にするのも怖いことなんだな。大丈夫だ。絶対そうはならないから」
お父さんの真剣な眼差しと、自分の中の後ろめたさに耐えられず――。
「お父さんとお母さんを殺すって……」
僕は、嘘をついた。
お父さんは僕を励ましながら、絶対に大丈夫だと何度も僕に言い聞かせた。たぶん呪いは解けていないだろうから、また八尺様と対峙しなくてはいけない。そのときは絶対に開けないで乗り切れと。
昨日その話を聞いたときはちゃんと真剣に聞いていたけど。今の僕にはもう、どうでもいい話になってしまっていた。
お姉さんの柔らかい身体にギュッとされて、パンパンに膨らんだ金玉から精液を出すあの感覚、それで頭がいっぱいだった。
お姉さんは僕のことを連れ去らない。次はセックスしてくれる。もう、僕には襖を開けない理由が何もない。
呪いが解けてないということは、僕はもう知っている。だってさっきトイレでシコシコしたから。射精できなくて、またあの苦しい気持ちが味わえるのがわかって興奮した。今日もお姉さんに会えると思って遠慮なくいっぱいシコシコした。キンタマがすごい勢いでパンパンになって気持ちが良かった。苦しくて、気持ちよかった。
でも、お父さんが明日から仕事ということと、昨日精液を出し切って時間があるということで、今日は自分の家に帰ることになってしまった。
てっきり、今日も会えると思ってたのに。もう本当はキンタマがパンパンだっていったら、おじいちゃんちに泊まれたんだとおもう。次がいつだかわからない。
でも言わなかった。だって、いっぱい我慢するほうが気持ちいいって、お姉さんが教えてくれたから――。